相続税額を大幅軽減できる小規模宅地等の特例とは?

相続税には相続人の状況によって適用できる多くの控除や特例があります。

その中でも、相続税額を大幅に軽減でき、かつ利用しやすい特例が小規模宅地等の特例です。この特例を利用できるかできないかで相続税額は大幅に変わってきます。

ここでは、小規模宅地等の特例の適用要件、特例を受ける場合の注意点をご紹介します。

1.小規模宅地等の特例とはどんな制度?

小規模宅地等の特例とは土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。

この特例は減額割合が高く、上手に利用することができれば土地の評価額は20%まで下げることが可能です。

1-1.小規模宅地等の特例の意図

相続税申告では、財産の相続税評価額に対して相続税が課税され、相続税を現金で納付しなければなりません。

そのため「相続税評価額が高い自宅を所有しているが、相続税を支払うための現金は持っていない」というケースの場合、自宅を売却して相続税の納税資金を捻出しなければなりません。

自宅を売却するような状態に陥ると、相続人の生活を脅かせてしまいます。その点を配慮してできた特例が小規模宅地等の特例です。

1-2.利用できる土地の種類

小規模宅地等の特例は、全ての土地に利用できるわけではありません。土地の利用状況により特例の対象になるかどうか異なります。特例の対象になる土地の種類は次の3種類です。

  • ①住宅で使っている土地(特定居住用宅地等)
  • ②事業で使用している土地(特定事業用宅地等)
  • ③貸している土地(貸付事業用宅地等)

この3種類の土地は、それぞれ減額割合と限度面積が異なります。詳しく見ていきましょう。

2.住宅で使っている土地の場合

亡くなった方(被相続人)が生前に住んでいた自宅の土地に適用できます。

減額割合 80%
限度面積 330㎡

次のいずれかに該当する場合に適用できます。

  • 自宅の土地を配偶者が相続する場合
  • 自宅の土地を被相続人と同居していた相続人が相続する場合
  • 被相続人に配偶者または同居していた相続人もいない場合で3年間以上借家に住んでいた相続人(※家なき子特例)が相続する場合

※家なき子特例は、相続開始3年前までに「自分の住宅、または自分の配偶者が所有する住宅」「自分の3親等以内の親族が所有する住宅」「関連法人が所有する住宅」に住んだことがない人に限られます。(平成30年税制改正)

【具体例】

相続税評価額が8,000万円、面積が500㎡の自宅の土地に特例を利用する場合です。500㎡の面積のうち限度面積330㎡が特例の対象になり、80%の減額を行います。

相続税評価額8,000万円×330㎡÷500㎡×80%=4,224万円

この場合、4,224万円の相続税評価額が減額でき、土地の相続税評価額は8,000万円-4,224万円=3,776万円になります。

3.事業で使用している土地の場合

亡くなった方が所有している土地で事業をしている場合に適用できます。

例えば、商店や工場を営んでいたケースがこれに該当します。適用を受けるためには亡くなった人の事業を引き継ぎ、同じ事業を少なくとも相続税の申告期限まで継続する必要があります。

事業形態によって小規模宅地等の特例の種類が異なります。個人で行っている場合は特定事業用宅地等に分類され、法人で行っている場合は特定同族会社事業用宅地等に分類されます。どちらについても減額割合、限度面積は同じです。

減額割合 80%
限度面積 400㎡

【具体例】

相続税評価額が1億円、面積が500㎡の事業用の土地に特例を利用する場合です。500㎡の面積のうち限度面積400㎡が特例の対象になり、80%の減額を行います。

相続税評価額1億円×400㎡÷500㎡×80%=6,400万円

この場合、6,400万円の相続税評価額が減額でき、土地の相続税評価額は1億円-6,400万円=3,600万円になります。

4.貸していた土地の場合

被相続人が人に貸していた土地に適用されます。

代表的なものは「賃貸アパートの土地」「貸し駐車場の土地」「貸し駐輪場」などが該当し、これらの土地を貸付事業用宅地等と言います。貸付事業用宅地等は親族に貸している土地についても該当します。

ただし、その親族から適正な地代や家賃を受け取っている場合に限られますので注意が必要です。貸付事業用宅地等の減額割合、限度面積は次のとおりです。

減額割合 50%
限度面積 200㎡

【具体例】
相続税評価額が6,000万円、面積が300㎡の賃貸アパートの土地に特例を利用する場合です。300㎡の面積のうち限度面積200㎡が特例の対象になり、50%の減額を行います。

相続税評価額6,000万円×200㎡÷300㎡×50%=2,000万円

この場合、2,000万円の相続税評価額が減額でき、土地の相続税評価額は6,000万円-2,000万円=4,000万円になります。

5.特例を受ける場合の注意点

小規模宅地等の特例は、相続税の申告で優先度が高く、利用価値の高い特例です。

もし利用できなくなってしまうと相続税額の負担がとても大きくなってしまうおそれがあります。確実に特例が利用できるように、いくつか注意点をご紹介します。

5-1.老人ホームに入所している場合は注意

亡くなった方が老人ホームに入所していた場合で、空き家になった自宅の土地に特例を利用する場合には3つの要件をクリアしなければなりません。

要件①要介護認定を受けていること

亡くなった方が相続開始時点で「要介護認定」または「要支援認定」を受けていなければなりません。要介護1や2などの程度については関係ありません。

要件②一定の要件を満たした老人ホームであること

老人福祉法や介護保険法に規定されている老人ホームでなければなりません。基本的に認可を受けている老人ホームはこの要件を満たしています。

気になる場合は念のために老人ホームへ問い合わせてみるといいでしょう。

要件③自宅を他人に貸し出していないこと

老人ホームに入所した後、第三者へ貸し出すと自宅での小規模宅地等の特例が受けられなくなり、貸付事業用宅地等に該当することになります。

貸付事業用宅地等の方が面積と減額割合が低いため、不利になります。

5-2.駐車場はアスファルト舗装かどうかが重要

貸し駐車場の土地で特例を受ける場合、アスファルト舗装をしているかどうかで適用の可否が異なります。アスファルト舗装をしていない駐車場(青空駐車場)は建物や構築物の敷地に該当せず、貸付事業用宅地等での特例を適用することができません。

小規模宅地等の特例を貸し駐車場で適用を受けようと思われている場合は、駐車場のアスファルトの有無を確認しておきましょう。

まとめ

今回は小規模宅地等の特例の概要と注意点をご紹介しました。

この特例は相続税の減額割合が高く、利用しやすい特例です。

ただし、相続人の状況によって適用の可否が異なるため慎重に検討しなければならない項目でもあります。

当会計事務所では小規模宅地等の特例についてのご相談も承っております。お気軽にご相談ください。

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