贈与税非課税で孫の教育を支援できる「教育資金の一括贈与」を解説

祖父母から孫へ金銭を渡すと贈与になり贈与税の対象になりますが、教育目的で金銭を援助する場合には贈与税は非課税です。

ただし、教育目的の金銭の援助は必要なタイミングで必要な金額をその都度、贈与する必要があります。

例えば、孫がまだ中学生なのに祖父母が大学の進学費用を贈与すると、必要なタイミングではないため贈与税が課税されることがあります。孫へ前もって教育資金を一括で援助したいという場合は教育資金の一括贈与に係る非課税制度を利用することで、贈与税が非課税で孫へ教育資金を援助することが可能です。

ここでは、教育資金の一括贈与に係る非課税制度の概要と注意点をご紹介します。

1.教育資金の贈与はそもそも非課税

教育資金の一括贈与に係る非課税制度をご紹介する前に、教育資金を援助する場合に基本的な贈与税の取り扱いを見ていきましょう。

国税庁HPの贈与税がかからない場合には、次のように記載されています。

(引用:国税庁)

夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものについては贈与税がかからないと記載されています。扶養義務者には祖父母が含まれているため、祖父母が負担する孫の教育資金には贈与税が課税されません。

ただし、負担する教育資金は今すぐ必要なものであり、祖父母の口座から学校へ直接振り込むなど、資金の流れを明確にしておく必要があります。

2.前もって教育資金の贈与をする場合は「教育資金の一括贈与」

祖父母が孫の教育資金をその都度ではなく、前もって資金提供すると贈与税の課税対象になります。

ただし、贈与税が課税されずに前もって一括で贈与しておきたい場合には教育資金の一括贈与に係る非課税制度を利用することで最大1,500万円までが贈与税非課税になります。この制度は2023年(令和5年)3月31日までの間に行われた教育資金の一括贈与に限られており、適用を受けるためには次の要件を満たす必要があります。

要件①父母や祖父母から30歳未満の子や孫への教育資金の贈与であること

1つ目は贈与者と受贈者に関する要件になります。贈与者は直系尊属でなければならないため父母・祖父母が該当します。贈与を受ける受贈者は子か孫で年齢が30歳未満に限られています。

また、受贈者には所得制限が設けられており、教育資金の一括贈与が行われる前の年の所得が1,000万円以下でなければ対象になりません。(平成31年改正)

要件②教育資金に使われること

教育資金の贈与のため、教育のために使われる必要があります。教育資金の範囲は「学校等に支払われる教育資金」「学校以外に支払われる教育資金」に区分されています。

学校等に支払われる教育資金の範囲

入学金や授業料、学用品代、修学旅行費用、給食費など学校等に通常要する費用

学校以外に支払われる教育資金

塾や習い事の費用、習い事に必要なものの購入費、習い事に行くための定期代、留学渡航費など

学校等に支払われる教育資金であれば1,500万円までが非課税になり、学校以外に支払われる教育資金については500万円までが非課税になります。学校以外に支払われる教育資金で受贈者が満23歳に達した日以降に支払われる塾や習い事に関する費用については、非課税の対象になりません。

ただし、教育訓練給付金の支給対象になる受講費は、23歳以降でも非課税の対象になります。

3.教育資金の一括贈与の注意点

教育資金の一括贈与を利用する場合、次のような注意点があります。

3-1.教育資金口座が必要になる

教育資金の一括贈与の利用には教育資金口座が必要になります。教育資金口座とは、金融機関がこの制度のために提供している特別な口座です。受贈者名義で教育資金口座を開設し、そこから教育資金を引き出し学費等の支払いを行います。

支払い後は、領収書を金融機関に提出しなければなりません。金融機関が税務署への届け出を行うことになります。

手続き方法を次の項目でご紹介します。

3-2.満30歳までに使い切らなければ贈与税が課税になる

教育資金の一括贈与は、受贈者が30歳未満の場合に対象になります。

そのため、受贈者が満30歳に達すると教育資金口座の契約が終了し、残額が契約終了した年の贈与税の課税対象になります。

ただし、次の場合は教育資金口座のある金融機関に届け出ることで期間を延長することが可能です。(令和元年改正)

  • ☑︎30歳になった時点で学校等に在籍している場合
  • ☑︎教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合

3-3.贈与者が亡くなった時は相続税の課税対象になる可能性がある

贈与から3年以内に贈与者(父母または祖父母)が亡くなった場合は、教育資金口座の残高(管理残高)が相続税の課税対象になります。(平成31年4月1日以降の贈与に限ります)

ただし、次の場合は贈与者が亡くなった場合でも教育資金口座の残高が相続税の課税対象になりません。

  • ☑︎受贈者が学校等に在籍している場合
  • ☑︎受贈者が23歳未満の場合
  • ☑︎教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合

4.教育資金の一括贈与の具体的な手続き方法

教育資金の一括贈与の手続きは通常の贈与と異なり、金融機関が関係してくるため適正な手順で行う必要があります。

具体的には次の手順により進めていきます。

手順①贈与契約を締結し贈与契約書を作成する

贈与者(父母・祖父母)と受贈者(子・孫)が贈与契約を結び、その証として贈与契約書を作成して押印します。贈与契約書には、贈与者と受贈者の情報の他に贈与金額と振込予定日の記載が必要です。

手順②教育資金口座の開設

受贈者は教育資金口座を取り扱う金融機関へ行き、教育資金管理契約を結んで教育資金口座を開設します。開設には贈与契約書の他に受贈者の戸籍謄本・抄本、確定申告書の控え、源泉徴収票などが必要になります。

手順③教育資金を振り込む

贈与者は、手順②で開設した受贈者の教育資金口座へ教育資金を一括で振り込みます。この振り込みが教育資金の贈与になります。

手順④教育資金非課税申告書の提出

受贈者は、教育資金口座の金融機関を通じて管轄する税務署へ教育資金非課税申告書の提出を行います。

まとめ

今回は教育資金の一括贈与に係る非課税制度の概要と注意点についてご紹介しました。祖父母から孫へ一括で教育資金を支援する場合は、この制度を利用することにより最大1,500万円まで贈与税を非課税にすることができます。

ただし、金融機関で教育資金口座の開設などの諸手続きが必要になります。

当会計事務所では、教育資金の一括贈与のご相談も承っております。お気軽にご相談ください。

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