効果的な相続税対策の方法を解説
相続税対策は富裕層のみが行わなければならない対策ではありません。2015年に行われた相続税の基礎控除の減額により、相続税の対象になる人が増加しています。
「うちは大丈夫」と思っていても、いざ相続が発生すると相続税がかかることが判明し、相続税を納税しなければならないケースもあります。
相続税対策は手軽にできるものから専門家の助けが必要になるものまで様々です。
ここでは、相続税対策に有効な方法についてご紹介します。
1.相続税対策をする前に財産診断
相続税対策には様々な方法が存在するため、どの方法が最適な方法なのか検討する必要があります。
そのためには「現在どんな財産をいくらぐらい保有しているのか」現状を知る必要があります。現状を知るためには財産診断を行いましょう。
財産診断を行うことで、財産の種類の割合や現状でかかる相続税の額などが明確になります。そのうえで、どの相続税対策が適しているのか検討してみましょう。
2.効果的な相続税対策方法
相続対策には、相続税の負担軽減に焦点を当てた相続税対策、遺産分割時に家族の中で争いごとが起こらないようにする遺産分割対策、相続税が納税できるように納税資金を確保する納税資金対策の3つの対策があります。
実際の相続対策では、この3つの対策をバランスよく行うことで効果的な相続対策が可能になります。
ここでは3つのうち、相続税の負担を軽減する相続税対策に有効な方法をご紹介します。
相続税対策①毎年110万円以下の暦年贈与(生前贈与)
毎年110万円以下の贈与を行うことで相続財産を減らしていく方法です。相続税は亡くなった日(相続発生日)の財産について課税される税金のため、生前に財産を移行させることで相続税は減少します。
ただし、生前贈与を行うと贈与税が課税されてしまいます。贈与税には年間110万円までは課税されないというルールがあるため、年間110万円までの範囲内で長い年月をかけて生前贈与を行うことで有効な相続税対策になります。
また、年間110万円を超えた贈与を行った場合でも、相続税率より低い贈与税率の範囲であれば相続税対策として有効です。
相続税対策②相続時精算課税を利用する
贈与税には前述した暦年課税と相続時精算課税の2種類の課税方法があります。相続時精算課税を選択すると、一定の条件を満たすことで2,500万円までの財産を非課税で贈与することができます。
ただし、相続が発生した場合には、相続時精算課税で贈与を行った財産は「贈与時の評価額」で相続財産に含めて相続税の申告を行わなければなりません。将来的に財産価値が高くなる同族会社の株式や土地、家賃収入が発生する物件など相続時精算課税により生前に贈与することで結果的に相続税を圧縮することが可能です。相続時精算課税を一度選んでしまうと暦年課税へは戻ることができません。
つまり、相続税対策①110万円以下の暦年贈与を利用することができなくなりますので、相続時精算課税を利用する場合は慎重に検討する必要があります。
相続税対策③各種贈与税非課税の特例を利用して生前贈与を行う
贈与税には各種贈与税非課税の特例制度があります。これらの特例を利用し、多額の資金の贈与を行うことで贈与税の支出を伴わない財産の移転を行うことが可能です。
相続税対策に利用できる特例には次のようなものがあります。
住宅取得資金の贈与の特例
父母や祖父母などの直系尊属から「住宅を購入するための資金」の贈与を受けた場合に利用することができる特例です。
取得する住宅が省エネ住宅に該当するかどうかで非課税枠が異なり、省エネ住宅の場合は最大1,500万円、それ以外の住宅は最大1,000万円の非課税枠があります。(現在のところ令和3年12月末までに取得にかかる契約を行った場合になっています。令和3年度税制改正大綱)
教育資金の贈与の特例
教育資金の贈与の特例は、30歳未満の人が父母や祖父母などの直系尊属から教育目的の資金の贈与を受けた場合に最大1,500万円まで非課税になる特例です。
教育目的の資金とは学校などの教育機関に直接支払う費用と学校等以外に支払う塾などの費用に分けられ、学校以外に支払う教育費用は上限が500万円となります。
この特例を利用する場合は、金融機関に教育資金口座を開設し、支払った教育資金の領収書などを金融機関に提出しなければなりません。教育資金口座の資金を違うことに使用したり、贈与を受けた人が30歳になったりした場合は特例に該当せず、通常の贈与税が課税されます。
養子縁組による非課税枠の拡大
相続税の計算では法定相続人の数によって非課税枠が異なるものがあります。相続税の基礎控除は1人あたり600万円、生命保険は1人あたり500万円、死亡退職金は1人あたり500万円の非課税枠が用意されているため、養子縁組を行って法定相続人の数を増やすことで相続税を圧縮することが可能です。
ただし、相続税の計算では何人でも養子縁組が認められるわけではなく、実子がいない場合は2人まで、実子がいる場合は1人までが法定相続人の数として認められます。(民法上は養子の人数の制限はありません。)
また、明らかに相続税対策として養子縁組を行っていると税務署が判断した場合は、法定相続人の数として認められないケースがありますので、養子縁組を利用した相続税対策は慎重な検討が必要です。
生命保険の非課税枠を利用
生命保険に加入し死亡保険金を受け取った場合、受け取った死亡保険金には非課税枠があります。
非課税枠は法定相続人の数×500万円で計算され、死亡保険が非課税枠の範囲内であれば相続税が課税される財産に該当しません。非課税枠を上手に利用することで、相続税対策と納税資金対策を同時に行うことができます。
例えば、生命保険に加入せずに5,000万円現金で保有している場合は、その5,000万円そのものに相続税が課税されます。
一方、生前に死亡保険金で5,000万円を受け取れる生命保険に加入している場合、死亡保険金の非課税枠が利用することができ、大きく相続税を圧縮することが可能です。
まとめ
今回は相続税対策に有効な方法についてご紹介しました。
どの方法でも生前に行わなければならない対策です。相続税対策は、相続が発生してからできる対策は少なく、効果もあまり期待できません。
そのため、しっかりと生前に対策を行っておくことが有効な相続税対策を行うカギとなります。「相続税対策はまだ早すぎる」と考えずに、早め早めから準備を行うことで良い相続を迎えることができます。
当会計事務所では、生前の相続税対策のご相談を承っております。お気軽にご相談ください。