相続での各士業の専門分野【税理士の役割とは】
相続では、各士業の専門家が様々な役割を担っています。
しかし、一般的にはどの専門家がどのような相続手続きを行っているのか判断が難しいのではないでしょうか。
ここでは、相続の専門家である税理士、司法書士、弁護士、行政書士の4つの専門家の役割についてご紹介します。
1.相続での各士業の専門分野
相続についての手続きは「相続が発生してから行う手続き」と「相続が発生する前に行う生前対策」の2種類の手続きがあります。
この2種類の手続きに注目して、各士業の役割とそれぞれが行える手続きについて見ていきましょう。
税理士の役割
税理士は「相続税」についての相談・手続きを行える唯一の専門家です。相続財産の評価、税務面からの遺産分割についてのアドバイス、相続税申告書の作成は税理士にしか行うことができません。
相続が発生した後だけではなく、生前から相続について税理士に相談することで将来を見据えた相続税対策を行うことができます。
弁護士の役割
相続でトラブルが発生した場合に問題を解決する役割を担う専門家が弁護士です。遺産分割では、土地や建物などの「物理的に分けることができない財産」が占める割合が多く、平等に財産を分けることはたいへん困難です。
そのため、家族間での「争族」に発展してしまうケースが少なくありません。当事者だけでは収拾がつかなくなり、裁判になる場合には弁護士が強い味方になってくれるでしょう。弁護士は「既に相続でトラブルを抱えてしまっている時」に相談する専門家です。
司法書士の役割
弁護士が揉めてしまった時の専門家に対し、司法書士はトラブルが発生していない時の専門家であり、相続による不動産の名義変更(相続登記)が行える唯一の専門家でもあります。
一般的な相続では、相続財産の中に土地や家屋などの不動産が含まれているケースが多く、不動産の相続では必ず相続登記が必要になります。
司法書士は、円満に遺産分割が行われ、不動産の名義変更を行う際に相談する専門家です。
行政書士の役割
行政書士は相続手続きで多くのことに関与することができません。遺言書や遺産分割協議書の作成と戸籍の取得や相続財産の調査を行うことはできますが、これらの業務は他の士業も行うことができます。
また、司法書士と業務が重複している部分が多くあります。行政書士は不動産の相続登記を行うことができず、行政書士に相続を相談した場合は連携する司法書士に依頼することになります。
そのため、最初から司法書士へ相談する方が効率的だと言えます。
2.最初に相談する専門家はどの士業?
相続で悩まれている方が最初に相談する専門家は「税理士」が間違いありません。遺産の総額にもよりますが、近年の相続税の基礎控除減額により相続税が発生するケースが増加しています。
相続税の申告では相続が発生して(ご家族様が亡くなって)10か月以内に申告を行わなければなりません。相続税が発生し相続税申告が必要かどうかの確認を最初に行わなければならないため、唯一財産の評価の計算を行える税理士に相談する必要があるのです。
3.相続での税理士の役割
税理士は相続で最も多くの分野で活躍できる専門家です。税理士業務は「相続が発生する前の対策業務」と「相続が発生した後の申告業務」に分けられます。
具体的な業務を見ていきましょう。
3-1.相続発生前の相続対策業務
税理士が生前に相続対策の相談を受けた際には「相続税シミュレーション」と「相続対策の提案」を行います。
相続税シミュレーション
相続税シミュレーションとは、現在の財産を把握し大まかな相続税額を算出することです。相続対策を行うための最初のステップは「現状の財産の把握」です。財産の把握を行わずに相続対策を行うことはできません。
現状をきちんと把握し、誰にどの財産を遺すのかを決めていくことは単に相続税対策だけではなく、円満な相続をするためにもとても重要です。
相続対策の提案
相続税シミュレーションにより、現状の財産リストと相続税の概算を算出した後は相続対策の方法について考えていきます。財産を遺す方の想いや意思を確認し、それを反映させた上で相続税額がなるべく少なくなる方法を模索します。
相続対策には、相続トラブルを回避するための遺産分割対策、相続税額を少なくできるように行う相続税対策、相続税申告時に納税資金が足りなくならないようにする納税資金対策の3つがあり、相談者の状況や要望によりバランスよく対策を行っていきます。
3-2.相続発生後の申告業務
相続発生後(財産の所有者が亡くなった後)は、相続税申告に向けて業務を行っていきます。
相続税申告の提出期限は相続発生後から10か月以内になっており、葬儀や法要など慌ただしい相続人にとってとても十分な時間とは言えません。税理士は相続人に対し様々なサポートを行っていきます。
相続人調査
「誰が相続人になるのか」は相続手続きにとってたいへん重要です。税理士は民法で定められた法定相続人を調査するために亡くなった方の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍等を取得し、法定相続人を確定させます。
準確定申告書の作成
相続が発生すると準確定申告が必要になることがあります。準確定申告とは亡くなった方の所得税の確定申告のことで、亡くなってから4か月以内に税務署へ申告を行わなければなりません。
相続財産の調査、相続財産の評価
被相続人がどのような財産を保有していたのかを調査します。不動産や有価証券、家庭用財産などを調査し、法律で決められた方法により財産の評価額を算出していきます。
特に土地や非上場株式の相続税評価額の計算は高い専門性が求められ、相続税が得意な税理士の腕の見せ所となります。
遺産分割協議書の作成
税理士は中立的な立場で遺産分割のアドバイスを行い、相続人の間で決められた内容によって遺産分割協議書を作成し、遺産分割協議書をもとに最終的な相続税申告書の作成を行います。
まとめ
今回は「相続での各士業の専門分野」と「税理士の役割」についてご紹介しました。相続は4つの士業がそれぞれの役割を持っているため、相談者にとっては煩わしく感じるかも知れません。
当事務所では、幅広い士業ネットワークを持っており、税理士が対応できない業務についても提携先の士業と協力して依頼者様のサポートを行います。相続でお困りの際は、お気軽にご相談ください。