2021.08.30ブログ
社員の発明は誰のもの? 職務発明制度について知っておこう
社員の発明や意匠を製品化して、企業が大きな利益を得ることは珍しくありません。そして、競合他社にその発明を使用されないように、特許を取得することもよくあります。では、社員が生み出した発明の特許を受ける権利(特許出願権)は、一体誰に帰属するのでしょうか。
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競合他社にはない新たな手法で製品を生み出したとしても、製品を分解すれば、容易にその手法が判明してしまうことは多々あるでしょう。そこで、その手法(発明)について特許を取得しておけば、原則として出願から20年間、その発明の実施(生産、使用、販売など)を独占できます。また、権利侵害者に対して、差し止めや損害賠償を請求することもできます。
発明に関する権利について、特許法という法律では、『産業上利用することができる発明をした者は、<中略> その発明について特許を受けることができる』と定めています(第29条第1項)。
ただし、発明者になれるのは、原則として自然人に限られており、法人は発明者になることはできません。とはいえ、発明のために多額の研究開発費を投じている会社は少なくありません。それでも、社員が行った発明は社員にのみ帰属するのでしょうか。
これについて定めた制度に、『職務発明制度』というものがあります。
まず、従業員が会社の職務として発明を行った場合(これを『職務発明』という)、発明者である従業員に『特許を受ける権利』が発生し、使用者には『通常実施権』が発生します。通常実施権とは、特許法の規定等で定める範囲内で、事業として職務発明を実施できる権利のことです。つまり、使用者は従業員の許可なしに、その発明を使用できるということです。
契約などで、『会社が職務発明の特許を受ける権利を有する』ことをあらかじめ定めておけば、職務発明が生み出された時点から、使用者が特許を受ける権利を有することも可能です。ただし、見返りとして、発明をした社員に『相当の利益』(相当の金銭その他の経済上の利益)を提供することも条件となります。
業務に関係のない発明は職務発明にはあたらない
では、勤務中に偶然、業務とは関係のないところで高度な発明をした場合にも、職務発明として、会社が特許を受ける権利を取得できるのでしょうか。
これについては、何が職務発明にあたるのかが問題となります。特許法では、職務発明といえるための要件として、以下の3つを設定しています。
①従業員がした発明であること
②その性質が会社(使用者)の業務範囲に属すること
③発明行為が、現在または過去の職務に属すること
つまり、その社員の担当外の仕事についての発明や、会社の業務と関係のない発明は、職務発明とはいえないということになります。
従業員が発明をする可能性のある会社は、従業員が発明をした場合は会社に報告することを義務化し、職務発明が誰に帰属するのかなどを定めた職務発明規定を作っておくことが望ましいでしょう。
また、特許を出願すると、審査の過程で技術が広く公開されてしまうため、必ずしも特許出願をしたほうがよいとは限らない点にも注意が必要です。簡単に製造法が分からないような製品は、あえて特許を取らず、製造方法を秘匿するケースも珍しくありません。
社内で従業員が発明をする可能性のある会社は、以上のことをよく理解しておくことが大切です。
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