2021.06.28ブログ
デメリットだらけのハラスメント! 企業に定められた対策の義務とは
2019年5月に『パワハラ防止法』(労働施策総合推進法)が成立し、2022年4月から中小企業にも適用されます。ハラスメント防止は企業の義務であり、社内の雰囲気の良化や人材の定着にもつながります。今回はハラスメント防止について説明します。
社員のみならず会社にも
デメリットの大きいハラスメント
「自分の会社からハラスメントをなくしたい」と思っている経営者は多くても、撲滅するのは簡単ではありません。なぜなら、被害者になるのは力関係が下の人が多く、上司との関係を悪くしたくないがために泣き寝入りしてしまったりと、表面化しにくいという事情があるからです。
また、ハラスメントには、会議中に一方的に叱り飛ばす、人格否定をするなど、ほかの社員がいる前で公然と行われるものもあります。こうしたハラスメントは、業務時間の無駄になるだけではなく、居合わせた社員の士気も下げてしまいます。結果として職場の雰囲気がどんどん悪くなり、全体に悪影響を及ぼすのです。
会社側の対策がないまま、そうしたハラスメントが横行すると、被害者だけでなくほかの従業員までもが会社に対して失望してしまい、人材流出のきっかけになるなど、経営的な視点でもデメリットが大きいといえます。
加えて、企業の対応が不十分となれば、使用者責任(民法715条)や安全配慮義務違反・職場環境配慮義務違反(民法415条)として民事上の責任が問われるおそれもあります。
こうしたハラスメントにまつわる問題を減らすため、2019年にパワハラ防止法が成立しました。
この法律では、企業に対してパワハラをはじめとするハラスメント全般への対策義務を負わせており、相談窓口の設置や再発防止策を求めるほか、対策をとらないどころかパワハラの事実を隠蔽するなど悪質な場合には、勧告および企業名の公表もあり得るとしています。
パワハラを防ぐために事業主は何をすべきか
パワハラ防止法では、以下を事業者の責務としています。
(1)職場におけるハラスメントを行ってはならないことや、ハラスメントに起因する問題に対する自社の労働者の関心と理解を深めること
(2)労働者に対して、社内や取引先の労働者に対する言動に注意を払うよう、研修やその他の必要な配慮をすること
(3)事業主や法人役員自身も、ハラスメント問題に関する理解と関心を深め、自社や取引先の労働者に対する言動に必要な注意を払うこと
しかし、なにをどこまでハラスメント行為というのか判断が難しい場合もあります。
厚生労働省のパンフレットによれば、『優越的な関係を背景とした言動であること』『業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの』『労働者の就業環境が害されるもの』のすべてを満たすものがハラスメント行為であると紹介されています。ただし、さまざまな事情があるので一概にいえるものではありません。パンフレットには、パワハラには該当しない例についても、具体的にあげられています。
たとえば、人格否定はパワハラにあたりますが、再三注意しても問題行動が改善されない社員に対して強く指導をすることはパワハラには該当しません。
ただし、自分の行為がハラスメントに当たるかどうかを客観的に判断できる人は少なく、ハラスメントをしていることに加害者本人が気づいていないケースもあるため注意が必要です。
よりよい職場環境づくりのためにもパワハラ防止は大切です。冷静に見極め、しっかり対処しましょう。