2020.08.09中小企業経営者の方へ
使用者が覚えておくべき『安全配慮義務』とは
長時間労働やパワーハラスメントが問題となっている昨今、使用者が労働者を安全に働かせるための『安全配慮義務』はますます重要になってきました。安全配慮義務とは、具体的にどのようなことなのでしょうか。さまざまなケースを交えて解説します。
労働契約法において安全配慮義務は、『使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする』と明文化されています。また、安全配慮義務は労働契約の付随的義務であり、契約時に規定がなかったとしても、労働契約を結ぶことで当然に使用者に安全配慮義務が生じるものとされています。
労働契約法上の文言にある『生命、身体等の安全』には肉体的な健康だけでなく、心身の健康も含まれます。具体的には、長時間労働が常態化しないように配慮することや、労働によってケガや病気になっていないか、職場内でなんらかのハラスメントが起こっていないかなどを管理することが重要です。定期的な健康診断や産業医によるメンタルヘルスのカウンセリングの実施なども、安全配慮義務に含まれます。
では、使用者が安全配慮義務を怠り、労働者が体調不良になったり事故を起こしたりした場合、使用者はどのようなリスクがあるでしょうか。
まず、法令違反があれば労働基準監督署等による行政指導がなされたり、是正勧告などの行政処分の対象になったりします。悪質性があれば検察庁に書類送検され、司法処分の対象にもなり得ます。
加えて、備品などを整備していなかったために労働者がケガをすることや、長時間労働が常態化してうつ病を発症し、自殺してしまうなどの悲しい事件が起きることもあります。このとき、使用者は民事的な損害賠償の支払いを求められたり、業務上過失致死傷罪などの刑事罰が科せられたりすることもあるのです。
そして、法的制裁だけでなく、マスコミによって報道された結果、社会的な信頼を損なうケースも少なくありません。顧客喪失や経営悪化にもつながり、信頼を回復するためにも多大なコストがかかります。
安全配慮義務違反による損害賠償が生じた事例は、これまでにも多くあります。
●陸上自衛隊事件
自衛隊員が自衛隊内の車両整備工場で車両整備中、トラックに轢かれて死亡。この訴訟により、使用者が安全配慮義務を負うことが初めて明言された。
●川崎水道局事件
川崎水道局に勤めていた従業員が、同じ課の課長や係長などからいじめや嫌がらせを受けて自殺。従業員に対する安全配慮義務違反が認められ、川崎市に2,100万円の損害賠償の支払いを命じた。
●電通過労自殺事件
長時間労働が常態化していた従業員が、うつ病に罹患後に自殺。企業は安全配慮義務を果たすために手を尽くしたと主張したが、最終的には安全配慮義務違反の判決が出され、最高裁で1億6,800万円の支払いを命じられた。
安全配慮義務違反により従業員や第三者に損害が出た場合、使用者は民事的・刑事的にも厳しく責任を追及されます。また、大々的な報道によって企業の信頼が大きく揺るぎかねません。従業員の心と身体の安全について、常日頃から配慮を心がけましょう。
安全配慮義務とは、従業員の心と身体の安全を守ること
労働契約法において安全配慮義務は、『使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする』と明文化されています。また、安全配慮義務は労働契約の付随的義務であり、契約時に規定がなかったとしても、労働契約を結ぶことで当然に使用者に安全配慮義務が生じるものとされています。
労働契約法上の文言にある『生命、身体等の安全』には肉体的な健康だけでなく、心身の健康も含まれます。具体的には、長時間労働が常態化しないように配慮することや、労働によってケガや病気になっていないか、職場内でなんらかのハラスメントが起こっていないかなどを管理することが重要です。定期的な健康診断や産業医によるメンタルヘルスのカウンセリングの実施なども、安全配慮義務に含まれます。
では、使用者が安全配慮義務を怠り、労働者が体調不良になったり事故を起こしたりした場合、使用者はどのようなリスクがあるでしょうか。
まず、法令違反があれば労働基準監督署等による行政指導がなされたり、是正勧告などの行政処分の対象になったりします。悪質性があれば検察庁に書類送検され、司法処分の対象にもなり得ます。
加えて、備品などを整備していなかったために労働者がケガをすることや、長時間労働が常態化してうつ病を発症し、自殺してしまうなどの悲しい事件が起きることもあります。このとき、使用者は民事的な損害賠償の支払いを求められたり、業務上過失致死傷罪などの刑事罰が科せられたりすることもあるのです。
そして、法的制裁だけでなく、マスコミによって報道された結果、社会的な信頼を損なうケースも少なくありません。顧客喪失や経営悪化にもつながり、信頼を回復するためにも多大なコストがかかります。
実際に損害賠償支払い命令が起きた安全配慮義務違反による事件
安全配慮義務違反による損害賠償が生じた事例は、これまでにも多くあります。
●陸上自衛隊事件
自衛隊員が自衛隊内の車両整備工場で車両整備中、トラックに轢かれて死亡。この訴訟により、使用者が安全配慮義務を負うことが初めて明言された。
●川崎水道局事件
川崎水道局に勤めていた従業員が、同じ課の課長や係長などからいじめや嫌がらせを受けて自殺。従業員に対する安全配慮義務違反が認められ、川崎市に2,100万円の損害賠償の支払いを命じた。
●電通過労自殺事件
長時間労働が常態化していた従業員が、うつ病に罹患後に自殺。企業は安全配慮義務を果たすために手を尽くしたと主張したが、最終的には安全配慮義務違反の判決が出され、最高裁で1億6,800万円の支払いを命じられた。
安全配慮義務違反により従業員や第三者に損害が出た場合、使用者は民事的・刑事的にも厳しく責任を追及されます。また、大々的な報道によって企業の信頼が大きく揺るぎかねません。従業員の心と身体の安全について、常日頃から配慮を心がけましょう。
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