2020.02.05中小企業経営者の方へ
従業員に身元保証人を求めるときの法律上の注意点とは?
Q.従業員が会社のお金を横領した、顧客情報を漏洩したなど、会社に何らかの損害を与えた場合のリスクヘッジの一つとして、従業員に対して身元保証人を求めようと考えています。
この制度を導入する際の注意点には、どのようなことがありますか?
A.身元保証の期間と責任の範囲でしょう。
一度、身元保証契約を結んでも、無期限で身元保証契約が存続するわけではありません。
身元保証契約を継続するのなら、契約の更新が必要となります。
また、従業員が会社に何らかの損害を与えたとしても、身元保証人に無制限に損害賠償をしてもらえるわけではないのです。
トラブルが起きたときのためのリスクヘッジとしての身元保証人
『身元保証人』という語感から、素性や経歴に偽りがないことを証明するものと認識している人も多いかもしれません。
しかし、身元保証の目的はそれだけではありません。
従業員が会社に何らかの損害を与えたときに、従業員だけでなく身元保証人にも賠償責任を負わせるというのが大きな目的です。
新入社員のなかには10代、20代という若年層も多く、従業員自身に資力がないことも多々あるため、身元保証人という制度を設けることで会社がリスクヘッジをしているといえます。
身元保証人には両親を立てるケースが一般的ですが、法律上特に条件はなく、各社が就業規則等で定めることができます。
ただ、身元保証の目的から考えて、安定した収入があり、独立して生計を維持している人を身元保証人とすることが望ましいでしょう。
気をつけたいのが、従業員側が、身元保証人制度を、単に素性や経歴に間違いがないことを保証するものと認識しているケースです。
実は、身元保証書を新入社員が代わりに書いていたり、身元保証人本人の同意を得ていなかったりするケースも少なくないのです。
身元保証書は必ず身元保証人の自署と実印の押印を求めて、さらに添付書類として印鑑証明書を提出してもらいましょう。
身元保証人には保証期間や責任の限度がある
従業員の損害賠償責任を身元保証人も負うとはいえ、無限に責任を負わせることは酷です。
そこで、身元保証人の責任を過度に重くすることを防止するために、『身元保証に関する法律』によって身元保証人の保証期間や解除権などが定められています。
この法律によれば、身元保証契約の存続期間は、期間の定めがなければ3年、期間の定めがある場合でも最長5年となっています。
更新期間も最長5年です。
また、一定の場合には、身元保証人から会社に対し、将来に向けて身元保証契約を解除することができ、これを身元保証人の解除権といいます。
なお、損害賠償責任についての金額が折り合わない場合には、以下にあげる事情のほか、すべての事情を総合的に考慮して裁判所が損害賠償額を決定することになります。
●従業員の監督に関する使用者の過失の有無
●身元保証人が身元保証を引き受けた経緯や事情、身元引受にあたりどの程度の注意を払っていたか
●従業員が従事する業務の内容や身上の変化
身元保証の法的意義や範囲を正しく理解し、万が一、従業員が会社に損害を与えてしまった場合に適切に対応できるよう備えましょう。
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